研究概要 |
本年度は,昨年度得られた力覚提示デバイスの設計を行う際の評価について研究成果の報告を行った(研究発表1,2,3).また,実際的なCAD/CAMシステムにおける形状モデルの力覚によるデザインレビュの実現のために,IGESトランスレータの開発,ならびに安定な力覚提示の実現のための干渉計算に要求される計算時間の考察をおこなった.この結果,一般的なモデルは多数の曲面より構成されているが,局所的には数枚(5枚以下)の曲面のみが接続しているため,1枚の曲面に対する干渉計算を0.2ms以下で行う必要のあることを明らかにした.また,干渉計算を行うためには,大まかな干渉点の予測を行うラフチェックが重要であり,NURBS曲面を構成する制御ポリゴンより高速に干渉点の推定を行うアルゴリズムを考案した.これらの知見を基にソフトウエアの開発を行い,力覚を用いたデザインレビュシステムにおいて最も重要な干渉計算が目標とする時間以内で実行可能であることを確認し,力覚提示システムへの実装を行った.そして,開発した力覚提示システムに対して提示精度などの基本的特性の評価を行った.本システムは,PentiumODP180Mzパソコンを制御用PCとして利用して構成した.実際的なモデルとして車のボンネット部分(幅1650×奥行き1300×高さ400)の約20枚のNURBS曲面モデルをIGES形式によりCADシステムより取り込み,力覚提示デバイスの可動範囲を考慮し約1/6倍で提示し,評価を行った結果,提示誤差が約1.5mmであり,また本システムを利用した場合自由曲面形状における約50μmの位置の不連続を知覚可能であることが明らかになった.利用した制御用PCの性能は現在の一般的なものと比較して低いので,現在の一般的な性能を有するパソコンを利用することにより,より実際的な100枚程度の自由曲面から構成されるモデルに対するデザインレビュの実現や,形状のリアルタイム修正が可能であると考えられる.さらに一般のCADシステムを用いた視覚のみによるデザインレビュ作業と本システムを用いて力覚を併用したデザインレビュ作業との比較を行い,ボンネット上の突起とボンネットを滑らかに接続する微小なフィレット曲面の連続性の確認を行う際に特に有効であることを確認した.なお,これらの結果の公表については,研究発表4,5により行う予定である.
|