研究概要 |
本研究は,変位センサを使用せずに圧電アクチュエータ変位のヒステリシスを低減させ,簡易で高精度な位置決めシステムを実現することを最終的な目的とする.そのために,本年度はアクチュエータの特性を詳細に調べ,その電気的状態・特性と機械的状態・特性との関係を実験的に明らかにした.まず圧電アクチュエータの変位,外力,印可電圧,チャージ電荷量,圧電効果による発生電荷量の関係を実験的に調査した.圧電アクチュエータには積層型のものを使用した.その結果,アクチュエータに圧電効果により電荷ができるだけ生じないようにゆっくりと駆動した場合では,圧電アクチュエータに加わる外力が大きくなると印可電圧と変位の関係は変位振幅が大きくなり,さらにヒステリシスが増加するのに対して,流入電荷量と変位の関係ではヒステリシスが減少する傾向があることを明らかにした.さらに,アクチュエータに蓄積する電荷量と変位の関係から,ステップ駆動時の位置決め対象物の変位を推定する方法について検討した.圧電アクチュエータで位置決め対象物を高速に駆動した場合には,対象物が振動してアクチュエータに力を加える.そのため,ゆっくりと駆動させた場合と異なり,圧電効果によってアクチュエータに電荷が発生する.本研究では駆動対象の変位が,駆動アンプから流入する電荷と圧電効果により発生する電荷にそれぞれ独立に対応する変位の和で表されるとして取り扱った.その結果,電荷のステップ応答の一部を指数関数で近似して表すことにより,駆動対象物の変位を高精度で推定することができることを明らかにした.
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