研究概要 |
生産システムは典型的な複雑システムであるという見方から研究を邁進した.各機械要素を自律エージェントとみなして環境内で自ら意思決定・知識獲得する機構を導入し複雑な環境内で適応的振舞い生成させながら全体として整合性の取れた大域的振舞いを創発的に獲得させることにより,内外の摂動に対し安定な生産を続けることのできるシステム構築を試みた.本研究によって得られた成果は,主に以下の4点にまとめられる. ・標準的な適応的計算手法は,生産システム周辺の問題に関して十分な最適化能力を持っていないため,適応能力向上のための拡張が必要であった.進化型計算に関しては,遺伝的浮動を利用する進化的プログラミング,探索の頑健性を飛躍的に向上させた進化戦略を提案した.また,共生・共進化関係生成のための枠組みに対して考察を深め,動的生産施設配置問題最適化レベルにまで探索能力を引き上げた.強化学習に関しては,実問題に適用するための厚い壁となっていた連続空間の取り扱いを可能にする枠組みを2つ提案し,その頑健性・有効性を計算機シミュレーション・実機実験により検証した. ・マルチエージェントシステムにおいて大域的に安定な振る舞いを生成するために,利他的行動生成部を追加した拡張型の強化学習法が有効であることを明らかにし,AGV群自律制御問題に適用してその有効性を確認した. ・生産システムへのジョブ投入のためのディスパッチングルールを自律的に獲得させるのに強化学習が有効であることを示し,実際の生産システムを意識した計算機シミュレーションを通してその有効性を確認した. ・複数AGVによる協調搬送問題に対して強化学習を用いた一解法を示した.強化学習が持つマルコフ環境で大域収束する性質を打破するために,各AGVが協調する相手の行動予測を行いながら自分の行動生成する枠組みを示し,その有効性を計算実験によって検証した.
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