本年度は前年度において得られた研究成果をもとにその発展的な研究を行った。特に本年度は、本研究の主題である知能分散型制御システムを使って、自由な軌道を歩行する手法についての検討、シミュレーションとその実機確認を行った。多脚歩行ロボットの場合、複数の脚が同じに着地しているので、自由な曲線軌道を実現するためにはすべての脚の協調動作が重要となる。一般的な管理型制御システムを使ってこれを実現する方法としては、最上位のコントローラがすべての関節の状態から各脚の動作を決定し、これを下位層のコントローラに具体的に指示する方法を用いている。これに対して、知能分散型制御システムでは各脚に共通な限られた情報のみで、各分散コントローラが担当する脚の動作を決定する必要があり、この方法で自由な曲線軌道を実現することは難しい。逆に言えば、知能分散型制御システムを使って限られた情報のみで曲線歩行が実現できれば、本手法の有効性を確認することができる。そこで、本年度は以下の手順で自由軌道の歩行を行わせるシミュレーションと実機実験を中心に行った。 まず、自由軌道の歩行を具体的に実現する方法の検討を行った。直線歩行を前提とした我々の従来の方法では、各分散コントローラが脚先の目標軌道を生成していた。しかしこの方法では曲線歩行を実現するには不向きであることが判明したので、従来の制御則を変更し、脚先の目標速度を生成するような仕様に変更した。さらに、各脚に受動関節を含む脚機構を採用し、その実験機を新たに設計・試作した。こうすることで、限られた小数の関節のみを駆動するだけで効率の良い歩行を行うことができることが判明した。まずは、この手法の有効性を確認する為に、計算機シミュレーションを行い、3次元アニメーションにて歩行の様子を確認した。最終的には前述の実機を用いて平面におけるスムーズな歩行を行うことができる事が確認された。
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