研究概要 |
1.1自由度補装機械に見立てたリニアモータを用い,提案した2種類の制御則について,再現性を確認する実験を行った.それぞれの制御則に対して40回(1回4分間)の操作を行い,各回の最後に実現されたリニアモータの見かけ上の動特性を推定することで結果を評価した.例えば慣性値で見ると,動特性補償項と回帰子が加速度信号を利用する制御則の場合,約7.3[kg]のスライダ慣性が見かけ上-6.4〜+23.8[g](平均6.1[g])になるという評価が得られた.動特性補償項と回帰子が加速度信号を利用しない「慣性オンリー」の状態を目指した制御則では,例えば250[g]の目標慣性値を与えた場合の評価は,254〜275[g](平均264[g];相対誤差5.6%)となった. 2.人間が「機構透明」に感じることのできる機械の動特性を,定量的に表現する試みを行った.本年度の研究では慣性値による表現を試みるため,被験者に「機構透明である状態」を想定した慣性を標準刺激として呈示し,それと比較刺激との間に差異を感じる閾を調べる実験を行った.上肢を対象とし,まず予備実験として,腕時計の質量程度の40[g]と50[g]をそれぞれ標準刺激とし,上肢の静止状態で手首に刺激を与えて実験を行ったところ,差異の閾はいずれの場合も20〜50[g]に存在していた.次に提案した制御則を応用して慣性オンリーの状態をリニアモータ上に作り出し,上肢運動を許した状態で手先に刺激を与えて実験を行うと,操作に習熟している被験者に明確な傾向が現れた.ただし,差異の閾が60〜75[g]となる(標準刺激は-15[g]±2.5[g](標準偏差))一方で,-9.7[g]±7.1[g]の標準刺激に対して,60〜80[g]の差異を持つ比較刺激だけを等価に感じる被験者もいた.より詳細な観察を行うために,さらに多くの実験が必要であると感じられる.
|