研究概要 |
本研究では光近接場効果を用いた超高密度光ディスクの開発を想定し,圧電駆動型の読み取りヘッドをシリコンプロセスを応用したマイクロマシン技術を用いて作製することを最終的な目的とする.本年度の成果を以下に示す. i)ゾルゲル法,スパッタ法による圧電薄膜の作製 圧電薄膜の成膜法として代表的なものに,ゾルゲル法とスパッタ法がある.前者はPZT溶液をスピンコートしたのちマッフル炉で加熱するプロセスであり,後者はPZT組成のターゲットを用いてスパッタ装置により成膜を行うプロセスである.本年度はまず最初にゾルゲル法による成膜を試みたが,信号の入出力用に堆積する上部,下部電極膜が導通してしまい,コンデンサ構造にならなかった.これはプロセスの途中で入り込む塵埃を起点として膜にクラックが発生するためと思われ,塵埃防止のための様々な方策を尽くしたが改善が見られなかった.そこでゾルゲル法を断念し,対向ターゲットスパッタ装置を用いてスパッタ法により圧電薄膜の作製を行った.この結果,成膜を多段階に繰り返して厚膜化を行うことで電極の導通の問題が解決され,高誘電特性を有する圧電薄膜の成膜に成功した. ii)流体力学を考慮したカンチレバの衝突振動シミュレーション プローブメモリでは,静的対象物を扱うプローブ顕微鏡と異なり対象物体が高速回転運動する.本研究ではこのような条件下でのプローブヘッド(マイクロカンチレバ)の衝突振動解析を行うシミュレーションソフトを開発することも目的とする.本年度はマイクロサイズのマシンにおいて無視できない表面効果(空気抵抗と表面張力)の影響を考慮するため,流体力学を援用してカンチレバの減衰係数を見積もり,その数値をシミュレーションソフトに取り入れてより現実に即したシミュレーションを行うことに成功した.
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