本研究においては、初年度の研究計画に焼成条件の違いによるセラミック半導体の電気特性の差異、および粒形状の変化の実測、さらにこれら作製条件の違いによりノイズ吸収性がどの様に変化するか明らかにすることを挙げた。 本研究においては、SrTiO3系セラミックバリスタを研究対象として取り上げ、はじめに焼成温度の違いが電気的特性にどの様な差異をもたらすか検証した。その結果、焼成温度を上げると、バリスタの非線形性を表す指針であるα係数の値が大きくなること、また、電流が急激に増加を始める電圧値が高くなることを明らかにした。その他、バリスタの特徴を表す誘電特性の内、静電容量についてみると、焼成温度の増加により低周波数側の静電容量が減少することが分かった。また、誘電正接は通常作製したサンプルでは1〜10MHz付近にピークを持つが、焼成温度の増加につれこのピークの値が高周波数側へシフトすることも分かった。 また、作製したサンプルを表面から研磨することにより、サンプルのどの部分でノイズ吸収が主として成されているのか検討した。サンプルに種々のノイズ波形を印加し、オシロスコープで観測した結果、研削量を増やすにつれノイズの吸収特性が低下する傾向が見られた。また、同時にα係数の変化も測定し、これらの結果からバリスタのノイズ吸収は主として表面層において成されているのではないかと考えた。 これらの結果を基に、詳細な等価回路を構成し、ノイズ吸収の様子をシミュレーションの面からも解析する予定である。
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