研究概要 |
光波長程度のサイズの領域に光を3次元閉じ込めして光ドットを作製し、輻射場のモードを離散化して自然放出光を人為的に変調しようという試みは、これまで主にリング型やディスク型の周回モード共振器や一組の分布ブラッグ反射器を配置した微小共振器を利用して実現しようという流れが主流であった。ところがこれらの構造には、それぞれ全反射を利用するため共振器サイズが大きくなり変調効果が小さいこと、光場の3次元閉じ込めが困難という課題が残る。当該研究では光の3次元閉じ込め(光ドット)による自然放出光変調を、II-VI族ワイドバンドギャップ半導体を材料に選択成長技術を用いて形成し量子ドット構造と結合するという新たな手法で実現し、量子ドット-光ドット結合系としての機能、物性を調べることを目的とする。これまでガリウム砒素基板にカーボン膜をマスクとしてパターニングし、その上に選択成長して形成した光波長程度のサイズを持つ硫化亜鉛(ZnS)半導体ピラミッド構造(底辺約800nm、高さ約300nm)を均一性・再現性良く作製することに成功し、さらに得られた構造が光ドットとして機能することを室温における顕微反射測定による離散化された輻射場モードの共振ピークの観測により新たに明らかにした(I.Suemune,A.Ueta,A.Avramescu,S.Tanaka,H.Kumano and K.Uesugi,Appl.Phys.Lett.74(1999)1963)。共振Q値は160〜330のオーダーであった。今後はこの光ドットを発光素子として機能させるため、セレン化亜鉛を活性層としてピラミッド構造中の輻射場の振幅の大きな位置に制御して埋め込み、活性層中の電子系(量子ドット)とモード離散化した輻射場(光ドット)の間の結合状態を、ピコ秒時間分解測定を主たる手法として用いて明らかにしていく。
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