半導体光共振器の分野で従来から研究されている構造は分布ブラッグ反射鏡(DBR)を用いた光の成長軸方向への一次元閉じ込めであり、この場合理論的に十分に大きな電子系との相互作用が得難い。当該研究では光場を閉じ込める半導体共振器として、従来型DBR構造に代わって選択成長技術を利用した、サイズが光の波長程度で光の三次元閉じ込めが可能なピラミッド型の半導体光共振器構造(フォトニックドット)を提案し、これを実際に作製した。この構造において反射スペクトル測定を行ったところ高い性能指数(Q値)を持つ共振ピークが観測され、三次元の光共振器として機能することを示した。 三次元光閉じ込めを実現するフォトニックドットは、カーボンマスク上でII-VI族化合物半導体であるZnSの選択成長技術を利用して作製した。マスク開口の典型的なサイズは1μmであり、ピラミッド構造の側壁は結晶成長時に自然形成される{034}ファセットで構成されるため、散乱ロスを抑制できる。このフォトニックドット一つに測定領域を絞り室温において反射スペクトルを測定した結果、三次元閉じ込めされた光場の共振モードの構造が明瞭に観測された。Q値は1000程度であった。更に、電子系と光場との相互作用の強さを示すPurcell factor(F)が、三次元光閉じ込め効果によりF〜9とDBR共振器では得られない高い値を示した。 微小光源としてこのフォトニックドットを考える上では活性層を埋め込む必要がある。そこでこのフォトニックドット中にCdS dotを埋め込み、光学特性の評価を行った。その結果、フォトニックドット領域にのみ光場の共振モードと対応する発光が室温で観測された。これらの結果は、光場の三次元閉じ込めにより強い電子系との相互作用が起こり、自然放出光レートが連続場の場合に比べて高くなっていることを示すと解釈できる。 更に自然放出光レートの変調の詳細を明らかにするため、時間分解分光法による寿命測定を行っていきたい。
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