Si基板上にエピタキシャル成長可能な直接遷移型半導体鉄シリサイド(β-FeSi_2)は、その発光波長(λ〜1.5μm)が光ファイバの最小吸収波長にあるため、Si IC間の電気配線に代わる光接続用の発光素子材料として注目されている。本年度は、p型Si/β-FeSi_2/n型Siダブルヘテロ構造を作製し、EL発光実現を目指すべく、まずは、赤外PL強度が強くなるようダブルヘテロ構造の作製条件の最適化を行った。 これまでの研究で、Si(001)基板上のβ-FeSi_2エピタキシャル成長膜は、成長後の真空アニール及び、その後のSi MBE成長により、Si単結晶内に球状に凝集して埋め込まれることが分かっている。しかし、埋込まれるβ-FeSi_2球が大きくなると周囲のSi結晶中に欠陥が導入され、PL発光しなくなるなど、β-FeSi_2球の大きさに非常に敏感であることが分かっていた。今年度新たに、β-FeSi_2球をSi MBE法でSi中に埋込む際の基板温度に、β-FeSi_2球からの赤外PL強度が非常に敏感であることが分かり、400-500℃の比較的低温で埋込んだ場合に、強い赤外PL発光が得られることが分かった。 これらの成長条件を用いて、β-FeSi_2球をSi pn接合に埋込んだ発光ダイオードを作製し、電流注入を行ったところ、ほぼ室温で1.6μmのエレクトロルミネッセンス(EL)を確認した。これは、β-FeSi_2のELとしては世界で2番目、また、最高温度でのEL実現である。
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