研究概要 |
本研究では,ミリ波帯における新しい誘電体材料評価法の開発を行った。従来より広く用いられていた誘電体共振器法をミリ波帯に適用すると,1)測定用共振器を構成するために用いられる金属部分での導体損失の増大が測定精度を劣化させる,2)波長にともない測定試料寸法が小さくなり過ぎ,試料の設置や励振用外部回路設定の際,作業効率が極端に低下する,等の問題点があった。これを解決するために,ウイスパリングギャラリモード誘電体共振器法を提案し,50〜75GHz帯用の測定システムを構築した。ウイスパリングギャラリモードは,円板形状誘電体の縁付近を周方向に伝搬する進行波により形成され,円周長さの数十分の1の波長で動作する共振モードである。共振電磁界は円板内縁付近に集中し,遮へい導体無しで共振器を構成できるので導体損とは無縁であり,ミリ波帯測定用の試料寸法も直径数十mm程度となり取扱いも容易となる。研究計画の初年度に当たる今年は,測定原理の構築及び測定公式の導出をおこない,さらに測定に都合の良い試料寸法を算定する設計チャートを作成した。次いで,測定用実験装置を製作し,実際に各種誘電体材料の50〜110GHzにおける複素誘電率測定を行った。またさらに,本測定法による温度特性の測定を試みた。まず,内部に測定用共振器等を組み込んだ実験用恒温槽を製作し,自動測定のための計測ソフトウエアを開発して,計算機制御による温度特性測定システムを構築した。これを用いて,室温から60℃にわたる温度特性の測定を,数種の誘電体材料に対して行った。この温度特性測定システムについては,引き続き来年度において検討を続ける計画である。 本研究により,これまで適切な方法が見当たらなかった,50GHz以上のミリ波周波数帯における低損失誘電体材料の特性評価が,比較的簡便に実行できるようになった。この成果は今後のミリ波技術の進展に大きく貢献し得るものである。
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