研究概要 |
本研究では、II-III_2-VI_4族化合物半導体という未知の結晶の育成と、これら結晶の物性解明を目的としている。ここでII-III_2-VI_4族とは、III_2-VI_3族とII-VI族の化合物であり、ZnGa_2Se_4、ZnGa_2Te_4、ZnIn_2Se_4、ZnIn_2Te_4などが例としてあげられる。本研究ではまずZnIn_2Te_4結晶の育成を垂直ブリッジマン炉にて行った。作成した結晶はX線回折による構造評価を行い、ZnIn_2Te_4結晶であることを確認した後、分光エリプソメーターによる光学測定を行った。その結果、1.5-2eV,2.8eV,3.7eV,4.3eV,5.1eVに臨界点を反映させた構造が観測された。このスペクトルを微分し、スタンダード・クリティカルポイント・モデルにて解析を行うことで、基礎吸収端のみならず不透明領域における正確な臨界点エネルギー値を初めて観測した。次にアンプルを急冷することによりZnIn_2Te_4バルク・アモルファス半導体の形成を試みた。作成した試料を分光エリプソメーターにて測定した結果、複素誘電率の虚部は、結晶のスペクトルとは大きく異なるテトラヘドラル型アモルファス半導体に特有な一つの山を有するブロードなスペクトルとなった。このスペクトルをタウク及びジェリソンらの提唱するモデルで解析を行った結果、アモルファスZnIn_2Te_4の光学エネルギーギャップの値は1.1eVであることがわかった。また、このII-III_2-VI_4族半導体はバルクアモルファスを形成しやすい系である事を確認し、フィリップスの理論との一致を得た。
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