1.顕微蛍光計測系の改良と量子構造における電子状態空間分布、キャリア拡散の評価 これまでの顕微鏡対物レンズとCCDカメラとで構成された顕微蛍光画像計測系に、スペーシャルフィルターを組み合わせ観測場所を選択したスペクトル測定を可能に、また、ソリッドイマージョンレンズを組み合わせより高効率高分解な測定系への改良を行なった。 この計測系を用い、へき開再成長法により(110)面上にMBE成長したGaAs量子井戸、T型量子細線における電子状態の空間分布、局在状態についての評価を行なった。(110)量子井戸界面には、面内方向に(110)特有のマイクロメータースケールのテラスを持つ3〜4原子層の膜厚ゆらぎが存在すること、また、その界面ゆらぎにより面内閉じ込めを受けた局在状態の空間分布の様子を明らかにした。また、温度特性から局在状態間でのキャリア拡散の様子を明らかにした。T型量子細線においても、同様に局在状態からのシャープな発光ピークが観測され、その発光強度の温度特性、空間分布の類似性からT型量子細線の電子状態には、へき開(110)量子井戸の電子状態が大きく反映していることがわかった。 また、パターン基板上に成長した面内膜厚分布を有する量子井戸構造にも適用し、量子化エネルギーの空間分布に対応した光励起キャリアのドリフト、拡散の様子を温度特性も含めて確認した。 2.顕微反射/変調反射分光計測系の開発 今年度は、対物レンズを用いた変調反射計測系の立ち上げまでを行なった。変調光に波長532nmのレーザ光、反射プローブ光に波長可変チタンサファイアレーザ光を用い、同一光軸で顕微鏡対物レンズを通して集光照射する構成とし、サブミクロン分解能での反射スペクトル測定を行なう。来年度は、上述の量子井戸、細線構造について測定を行い、蛍光の結果と合わせて、より詳細な面内膜厚分布等についての知見が得ることを考えている。
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