ポリウレタンの曲げ電歪の機構を解明するために本年度は試料に電場を印加した状態での各種スペクトルの測定を行った。本年度は特に紫外可視吸収スペクトルの測定に重点を置き、以下の知見を得た。 1.ポリウレタン膜の両面にイオンスパッタリングにより形成させた厚さ9nm程度の金薄膜は紫外可視領域の光をある程度透過できるので、この金薄膜を電極としてポリウレタンに電場を印加しながら透過法により紫外可視吸収スペクトルを測定すると言う新手法を確立した。 2.ポリウレタンに微量の酢酸ナトリウムを添加した系では、電場印加による紫外可視吸収スペクトルの変化が確認できた。また、この変化は可逆的であり、速度的にポリウレタン膜の曲げ変形と対応するものである事も見い出した。 3.上記2で述べたスペクトル変化がポリウレタンのどの部分構造に起因するものであるかを検討した結果、ハードセグメントの部分によるものである事を明らかにした。 4.ポリウレタンに微量の酢酸ナトリウムを添加した場合、電場印加によって紫外可視光吸収が大きくなるだけではなく、屈曲変形も大きくなる事が見い出された。さらに一連の塩の添加について調べ、屈曲変形を増大させるための塩の種類、屈曲方向を制御するための塩の種類を明らかにした。 5.電場印加による紫外可視吸収スペクトルの変化がほとんどない高分子と、ポリウレタン膜とが二層に重なった試料に上記1で述べた測定手法を応用し、正極面のみ(または負極面のみ)での電場印加による紫外可視吸収スペクトル変化を測定する手法を開発した。曲げ電歪は正極面/負極面で生じる歪に差があるとき起こる変形であるから、両極を別々に測定できるこの手法は曲げ電歪の機構解明に大きく役立つと思われる。
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