研究概要 |
本年度は,分子線エピタキシー(MBE)を用いてSrTiO_3(100)およびMgO(100)基板上にMnPt/NiFe交換結合膜を作製し,その構造と交換異方性について検討を行った. (1)基板温度を変化させてSrTiO_3(100)上にNiFeを成長させ,その成長表面をRHEEDにより調べた結果,NiFe層は基板の配向性を受け継いでエピタキシャル成長することが分かった.また,NiFe層上のMnPtは基板温度100℃までは(100)配向を200℃以上では(001)配向と変化することが分かった.このMnPtの配向性の変化は磁気特性に大きく影響を与え,(100)配向膜の交換結合は220 Oe程度であるが,(001)配向のものではほぼ0となった.これは交換結合がMnPt反強磁性層のスピンの向きにより大きく変化することを意味する.また,MnPtは規則合金であるため大きな交換結合磁界を得るために一般に熱処理が必要であるが,MBE法では室温成膜でも大きな交換結合が得られるという興味深い結果が得られた・ (2)MgO(100)基板上にMnPt層を成膜した場合,PtやCrなど下地層材料を変化させることによりMnPtの配向性を制御できることが分かった.(100)および(001)配向のMnPt上にNiFeを成膜したが,両者とも交換結合磁界はほぼ0となった.しかしながら,膜面内の磁気異方性は大きく異なり,(100)配向したものではNiFe層だけでは説明できない大きな4回対称の異方性が観測された.これは,MnPt層内の磁区が結晶軸に添った形で形成され,それらとNiFe層が交換結合しているためと考えられる.一方,(001)配向膜では上記の4回対称異方性がかなり小さくなり,交換結合の結晶配向依存性を示す結果が得られた.
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