超伝導材料を、無損失に電流を流すことができる超伝導線材として利用するには、高い臨界電流密度を実現する必要がある。この臨界電流密度特性は、量子化された磁束線を効率良くピン止めするためのピンニングセンターを線材内部に導入して、後天的に付加することで実現できる。本研究では、20T以上の高磁場で有効に作用するピンニングセンターの導入することを目的として、次世代の高磁場用超伝導体であるジェリーロール法Nb_3Al多芯線材に対して、熱処理条件を変えて、ピンニングセンターの大きさや密度を変化させ、ピンニング特性を比較した。 超伝導線材の熱処理は、試料に直接電流を通電して、試料を約0.5秒間で1600〜2050℃の範囲の設定した温度まで過熱し、設定した温度(最高加熱温度)で通電を遮断して、真空中で冷却を行った。温度は、フォトダイオードを用いて、材料表面の輝度温度を測定して求めた。この結果、到達温度がNb_3Alの融点(約1950℃)より低い場合と、高い場合において、反応状態やピン止め特性が大きく異なる結果が得られた。Nb_3Al融点よりも低い温度ではNb層が残り、ピン力密度は、最高加熱温度を変化させてもほぼ同じ値となった。これは、結晶粒の大きさがジェリーロール法のNb層領域で制限されたためと考えられる。また、最高加熱温度がNb_3Alの融点以上では反応が一様に進み、結晶粒が成長したと考えられ、この結果Fpの高磁場におけるピークが顕著に現れた。今後は、通電加熱方法と超伝導特性との関連とミクロ組織との関連について検討を行う予定である。
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