研究概要 |
近年,マイクロマシンの要素技術である電磁型アクチュエータは,より小型化される傾向にあり,膜面垂直方向に磁化した場合の反磁界をどう抑えるかが,アクチュエータ開発の重要なポイントとなっている.本研究では,この問題を解決するために,アルマイト磁性皮膜を改良し,直径0.2μm,長さ60μm,即ち,アスペクト比300の針状磁性体が,0.4〜1μmの間隔で,膜面垂直方向に無数に並んだ磁気繊毛皮膜を作製し,これ利用して,小型平面アクチュエータを試作することを目的とした.以下に,研究概要を示す. (1)バリア層貫通処理の検討 アルマイト皮膜の微細孔中への金属析出に,直流めっきを用いる場合,微細孔とめっきの際の電極となる下地アルミニウムの間に存在する絶縁性のバリア層を貫通する必要がある.しかし,微細孔の直径を変えるために,陽極酸化の条件を変えると,そのつど,この貫通条件を模索する必要があった.本研究では,陽極酸化後の酸化皮膜を,下地アルミニウムから逆電剥離し,そのバリア層側に,アルミニウムを蒸着し,再陽極酸化を行った.新たに成長した微細孔は,バリア層を貫通するので,蒸着アルミニウムを除去した皮膜に,Cuを蒸着し電極とすることにより,従来のようなバリア層貫通条件を模索することなく直流めっきを行うことが可能となった. (2)リソグラフィ技術の適用 アルマイト皮膜の微細孔の直径は,最大でも0.1μm程度と微小なため,本来,軟磁性を示すCo基非晶質合金を,微細孔中にめっきし,針状磁性体を作製した場合でも,最小でも50Oeという大きな保磁力を有する.本研究では,軟磁性化を目的とし,レジスト・紫外線露光等のリソグラフィ技術を,アルマイト皮膜に適用し,断面10μm×10μm,長さ200μmのCo磁性角柱が,間隔100μmで並んだ磁性皮膜を作製することが可能となった.
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