単電子デバイスにより構成されるニューラルネットワークの実現を目的として、確率的な単電子トンネリング現象を数値シミュレーションによって解析した。まずシミュレーション技術の確立のため、モンテカルロ法とマスター方程式による方法の二つについて比較検討を行い、両者のシミュレーション特性を評価した。本研究で対象となるようなニューラルネットワークの動作分析にはモンテカルロ法が適していることが分った。次にSETトランジスタを基本としてニューロン、シナプス両回路を実現し、ネットワークの動作を確認した。最適化問題などを対象として、所望の動作が実現されることを確認した。このことから確率的な状態遷移がローカルニミマからの脱出を促すという知見を得た。特に協同トンネリングを積極的に取り入れることにより、その脱出効果がより強くなることが分った。これらシミュレーション結果から、単電子デバイスのニューラルネットワークへの適用の有効性を確認した。また理論的な検討から、実現可能なサイズ、消費電力等の見積りを行った。デバイス製作においては、単電子デバイスの製作のために必要不可欠の基本技術である極微細パターンリソグラフィー技術を電子ビーム露光装置を使って確立を図った。現在まで0.1μmの細線パターンの加工技術が確立された。また、ドライエッチング装置を使ったこれら細線の加工技術を確立した。これら技術を用いてAl-AlOx-Alのトンネル接合形成し、その基本特性を調べた。以上により、単電子デバイス製作上の基礎技術を確立した。
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