現在、次世代の光通信に向けて、光ファイバ網の加入者系への拡張と波長多重(WDM)による大容量化が急速に展開されている。そのためには種々の機能性デバイスの開発が必要となっているが、中でも非相反性を利用したアイソレータやサーキュレータは重要なデバイスである。例えば、アイソレータは光増幅器の特性を引き出し安定化させるために必要不可欠であり、サーキュレータはWDM通信において波長選択フィルタと組み合わせることで、任意の波長を抽出することが可能である。 本研究では、他のデバイスと融合させ新たなシステムを構築する上で非常に有効である石英系の平面導波回路にそれらのデバイスを多並列・高密度に集積化することを目指す。 (1)平面導波路集積型アイソレータの最適設計および作製 ビーム伝搬(BPM)法を用いた数値計算により、導波路の構造および構成素子の最適設計を行なった。その結果、素子の厚さ、導波路間隔などを最適化することで、全損失が個々の損失の単純な和よりも小さくなる新しい効果が発見された。最適化した構造の光アイソレータを作製し、挿入損失3dB、逆方向損失20dBを得た。 (2)サーキュレータ用偏光分離素子の開発 もう一つの非相反性デバイスである光サーキュレータについて設計・作製の基礎実験を開始した。サーキュレータで重要な偏光分離素子をフォトニック結晶を用いた新しい構成で実現した。光学評価では損失0.2dB、消光比50dBが得られた。この素子を用いた光サーキュレータをバルク型で実現し、基本的な動作を確認した。
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