低印加電界において非常に大きな吸収を得ることができ、チャーピングなども抑制できる構造として、ポテンシャル制御量子井戸や量子ドット構造を光吸収層に用いた超高速光変調デバイスの実現を目指している。このような光変調デバイスを実現するためには、井戸層および障壁層の層厚を設計通り精密に制御すること、およびノンドープ層の不純物密度を1-5×10^<15>cm^<-3>台にまで下げることが必要である。本年度は、これらを実現するために、分子線エピタキシー装置について次のような改良を行った。 1)ロードロックチャンバーに成長前基板加熱処理装置を設置した。 2)反射高速電子線回折装置(RHEED)を増設した。 3)Migration Enhanced Epitaxy(MEE)を行うため、Kセルシャッターのコントロール機構を作製、設置した。 また、ポテンシャル制御量子井戸の一つである5層非対称結合量子井戸(FACQW)の電界誘起屈折率効果について数値計算により詳細に検討した。その結果、以下の知見が得られた。 1)FACQWの各層が設計値からずれた場合、障壁層よりも井戸層のずれの影響が大きい。また、 2)FACQW全体が一定の割合で層厚が厚く、または薄くなった場合はΔn特性の劣化はほとんどない。 3)屈折率変化-印加電界特性において、ある印加電界でのΔnの急激な落ち込み(ディップ)が存在するが、障壁層の位置をわずかに移動させることで除去が可能である。 4)井戸層および障壁層各層の膜厚揺らぎがΔn特性に与える影響を見積もった。±1ML程度の揺らきがある場合、全く揺らぎがない場合に比べて最大でΔnが1/3に低下する。
|