初年度である本年は、多波長発振レーザーを用いた測定装置の構築を行い、当初の目的である分子配向定量評価が達成できるか検討を行った。本研究では、液晶素子のデバイスパラメーターである、液晶配向のねじれ角及びセル厚の測定系を確立する。 従来のHe-Neレーザーの波長ではmauguin minimumが原因となって測定が行えなかった測定試料に対して、別の波長を選択することによって、ツイステッドネマティック液晶素子のねじれ角が精度良く測定できることを明らかにした。また、測定結果の数値解析についても、多重反射・干渉を考慮した4×4 matrix法によって解析することによって高精度かつ高速に解析が行えることを実証した。これらの成果は、日本液晶学会討論会にて報告した。この測定法は見方を変えれば一種の偏光解析であり、回転検光子法同様に機械的に試料及び偏光子を回転させているのが特徴だが、この機械的要素が測定精度に影響を及ぼすことも併せて明らかとなった。よって、測定精度を向上させるためには、光軸合わせに新たなる工夫が必要である。 また、別の分子配向定量評価法として、エリプソメトリー測定装置を用いた測定手法の構築にも取り掛かった。その結果、ユリプソメトリーを用いることによってもmauguin minimumが原因となる測定限界を克服することが出来ることを明らかにした。この成果は春季応用物理学連合講演会にて報告する予定である。この手法では、測定精度も比較的高い反面、測定結果の解析に要する手順が若干複雑となる。今後は、両測定手法の更なる改良を行う予定である。
|