本研究は、消費電力が10数mW以下の低消費電力携帯機器向けの、振動、熱、光その他電磁波等の自然エネルギーあるいは人為的エネルギー源を発電に利用し、その電力で携帯機器の電力を賄うために必要な新しい電力源と電源回路技術とを開発することを目的とした。 始めに、乾電池の代わりとなる新たな電力源の検討を行った。具体的には、人間の歩行動作による振動をムービングコイルによって発電させるメカニカル方式による自己発電方式と安価で構造が非常に簡単な果実による化学式電池の2種類について測定を行った。メカニカル方式による自己発電方式では、固定式多ターンコイルとムービング磁石による発電方式でピークで数百mVの起電力が得られた。しかし、ムービングコイルの共振周波数と一致するバネが使用できなかったために定常発電には至らなかった。一方、化学式電池では定常的に0.94Vの起電力が得られた。一種類の電力源だけでは電気エネルギーをまかなうには十分ではなく、複数の電力源を組み合わせる必要がある。 次に、これら得られた電気エネルギーを回路に供給するために十分な電圧までレギュレートする必要があるため、低電圧動作DC-DCコンバータの1次検討を行った。DC-DCコンバータの動作に必要となるクロック生成回路(PLL)を設計し、集積回路を試作した。その結果、安定動作をするクロック生成用PLLを実現できた。また、この集積回路の設計を通して集積回路設計技術の確立が達成できた。
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