半導体基板と強磁性Co超微粒子の接合界面におけるスピン偏極電子の輸送機構を利用した能動化機能デバイスの実現に向け、Co超薄膜のin-situ磁気抵抗測定を行い、以下の成果を得た。 1)電子ビーム蒸着装置の真空チャンバー内に磁場印加コイルおよび電気抵抗測定用の電極導入端子を取り付けたin-situ磁気抵抗測定装置を作製した。本装置により、従来の方法では表面酸化などの影響により困難であった強磁性超薄膜の磁気抵抗特性を系統的かつ効率的に調べることを可能にした。 2)原子間力顕微鏡(AFM)を用いてGaAs基板上に蒸着したCo薄膜(膜厚11nm)の表面凹凸観察を行った結果、成膜速度が3.5×10^<-3>nm/sの場合では膜厚と同程度の大きさの結晶粒が形成されることが分かった。その結果、成膜時間、速度により島状構造(粒径、粒間距離)を制御した強磁性Coクラスタ伝導系を形成可能であることを確認した。 3)n-GaAs基板上にCu電極とSiO_2スルーホール膜を形成し、スルーホール部に強磁性Coを成膜しながら磁気抵抗測定を行った。その結果、成膜速度が3.5×10^<-3>nm/sの場合ではCo膜の連続化膜厚は14nmであり、それ以下の膜厚領域では強磁性Coクラスタ伝導系が接合界面でのスピン依存型散乱を反映した負の磁気抵抗効果を示すことが分かった。また、Co膜厚を精密に制御しながら磁気抵抗特性を調べた結果、Co膜厚が4.6nmの場合に最大磁気抵抗変化率0.21%が得られることが確認できた。今後、強磁性Coクラスタ伝導系にバイアス電界を印加できるCu電極を付加した三端子素子を作製し、そのゲート動作を検証することにより、スピン依存型の新しい能動素子について検討を進める予定である。
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