研究概要 |
スピン偏極電子流の注入材となる強磁性微粒子の磁気特性を明らかにするため、強磁性薄膜上に非磁性Cu層を介して強磁性クラスタおよび強磁性レリーフ構造を形成し、その磁気抵抗測定を行い、以下の成果を得た。 1)NiFe(4nm)/Co(0.5nm)/Cu(12nm)上に強磁性Coを電子ビーム蒸着しながら電気抵抗測定を行った結果、Co膜が電気的に分離した島状構造を形成する膜厚領域(t_<Co><1nm)では表面散乱の増加により抵抗が増加することが分かった。また、上層Coのシャント電流によるMR比の低下はt_<Co>>3nmにおいて顕在化すること、および上層Co上に鏡面反射係数の大きなAg膜を成膜することによりt_<Ag>=3nmでMR比を20%増加できることを明らかにした。 2)強磁性多層膜の電気伝導度を測定しながらイオンミリング加工を行うことにより、ミリング深度を数nmオーダで制御可能にした。この方法により、GMR効果を有する磁性3層膜の上部磁性層のみをサブミクロン微粒子群に微細加工した強磁性レリーフ構造膜を作成した。 3)強磁性レリーフ構造膜の磁気抵抗測定より、膜厚が数nm程度のサブミクロン強磁性ドット配列における反転磁場分布、およびそのドット形状依存性を調べた。その結果,外部電極を強磁性ドットに直接接触させない本方法を用いることにより、端部磁区形成による残留磁化の減少を測定することができた。本研究で観察された端部磁区の試料形状依存性は、サブミクロン強磁性ドット配列群の反転磁場の低減、および均一性の向上が求められている次世代磁性ランダムアクセスメモリ(MRAM)開発の観点からも重要な成果であると考えられる。 4)本研究で作製した強磁性レリーフ構造膜は、GMR膜全体を微細化する従来のMRAMビットに比べて磁性層間の磁気双極子結合が小さいことから、今後MRAM素子の高記録密度化において問題となる反転磁場増大を解決する有効な手段になると考えられる。
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