研究概要 |
本研究では,符号分割多元接続通信における干渉の適応アレーアンテナによる抑圧のために,スペクトル拡散信号の周期定常性に基づいたブラインド適応アルゴリズムを利用することについて主に検討した.従来のこの種の研究のほとんどはデータ速度がユーザ毎に異なる場合を主に対象にしていたが,本研究では,同じデータ速度の複数のユーザが混在する場合の信号分離の問題を検討した. まず,従来のSCOREアルゴリズムより収束特性の優れるCastedo等の手法をマルチユーザ環境に適用する方法を提案した.これは,周期定常に基づく信号抽出に加え,受信機出力間の無相関化を図ることで信号の分離を行うものである.2ユーザの場合について評価関数の停留点を調べ,6種類の停留点が存在することを明らかにした.その中に望ましい解,すなわち,それぞれの受信機出力に異なる信号成分が現れる場合,が含まれることを確認した.次に,SCOREアルゴリズムに先述の無相関化を組み合わせた方式を検討した.同じデータ速度の2ユーザに対し,それぞれ異なる拡散率の拡散符号を割り当てることで,異なる周期定常性を持たせることができる.このときSCOREアルゴリズムのパラメータを適切に選ぶことで,信号の分離ができることをシミュレーションにより確認した.これらの方法は,従来の手法に比べ,受信機構成が簡易,同期系が簡易になるなどの可能性を有している.また,非線形適応フィルタによる干渉抑圧の問題として符号間干渉抑圧を検討した.ブラインド処理により非線形フィルタを調節する本手法は,従来の線形手法や非ブラインド手法に比べ,優れた性能を持つことをシミュレーションにより確認した.本手法のアレーアンテナへの拡張も可能であると考えられ,今後,より具体的な検討を行う予定である.
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