本研究課題の目的は、広帯域ディジタル通信の信号伝送特性に大きな影響を与える建物内の複雑な電波伝搬特性の解析をシミュレートするための理論構築と、その理論に基づいたシミュレーションプログラムの作成、そしてその解析手法の正当性を実験によって確認検証するための、屋内電波伝搬特性計測システムの構築である。本研究では、有限差分時間領域法を拡張し、広帯域信号の伝搬特性を予測するための理論解析手法を構築した。これは、有限差分時間領域法によって求められた時間領域伝搬波形を離散フーリエ変換することにより、建物内の場所による周波数領域伝達関数を求め、広帯域ディジタル通信の信号伝送特性を、シミュレーションによって予測する手法である。本解析手法を用いることにより、屋内の什器レイアウトが広帯域信号の伝搬に与える影響を、実験を行うことなく予測することができるようになる。 本年度は、この解析手法の理論構築を行い、そして本手法を用いた数値計算用プログラムを作成し完成した。また、本研究の理論解析手法の正当性を実験により実証するため、屋内電波伝搬特性計測システムの構築を進めている。このシステムは、ネットワークアナライザ、送信アンテナ、マイクロ波増幅器、受信アンテナ、プリアンプ、制御用コンピュータによって構築される。本年度は、このシステム用の送受信アンテナを作成し、各ユニットを接続して動作させるまでシステム化した。これら各ユニットをコンピュータを用いて制御し、シミュレーションによって予測した結果と比較検証するのは、次年度となる見込みである。
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