近年、医療、美術等の分野で、超高精細静止画像の符号化に対する要求が大きくなってきている。超高精細静止画像のファイル容量は現在インターネット上で伝送されている通常の画像に比べて非常に大きく、なおかつ、医療、美術等の分野では画像圧縮による劣化が許されない場合が多いために、特別な取り扱いが必要になる。つまり、静止画像の標準方式であるJPEGのような再生画像に劣化が生じる符号化方式(ロッシー符号化、これに対して、劣化が生じない符号化方式をロスレス符号化という。)を用いることはできず、さらに、符号化されたデータの一部を取り出して、様々な品質及び解像度で再生できる機能(スケーラビリティ機能)が必要になる。そこで、本申請では、対象画像を超高精細静止画像までに拡張した、スケーラビリティ機能を有するロスレス符号化方式、「超高精細静止画像のロスレス・ロッシー統一符号化システム」の構築を目的としている。 本年度は、離散コサイン変換およびウェーブレット変換と同様に重要である重複直交変換(LOT)のロスレス版の設計を行った。高速LOTをN点ブロック変換に分解し、ラダー回路で置き換えることによりロスレスLOTを得た。4点ロスレスLOTを最低域成分に繰り返し用いる31帯域分割方式と8点ロスレスLOTを用いる64帯域分割方式の性能を、ロスレス圧縮効率、ロッシー圧縮効率及び有歪み再生された画像の品質の点で評価し、ロスレス離散コサイン変換と圧縮効率が同程度であること、有歪み再生した場合に、離散コサイン変換で問題となるブロック歪みが発生しないことを示した。 また、ロスレスウェーブレット変換、ロスレス離散コサイン変換、及び予測符号化のうち2つを組み合わせるハイブリッド型ロスレス変換方式を提案し、従来のロスレス変換よりも圧縮効率が高くなることを示した。
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