研究概要 |
本研究は,画像において一般に品位と呼ばれているものを表し得る情報に着目して,それに基づいた画像処理技術の構築を指向している。そこで,まず,西洋絵画を対象として,その鑑賞において生じる芸術的印象のことを新たなキーワード:高度感性情報と定義した上で,高度感性情報そのものについて解析を行う。 1.主観評価:まず,西洋絵画に関する複数の文献を対象に,芸術的印象を表していると考えられる画像評価語の収集を行った。また,同時に西洋絵画の技法(物理的要因)を表している構成要素についても収集した。その後,Dematel法による解析を行うことで,画像評価語と構成要素との間の階層構造を明らかにした。得られた階層構造に対して階層分析法を適用することで,高度感性情報との関わりが強く,且つ,定量的に画質を評価可能である評価語が「奥行き感」であることを解析的に明らかにした。 2.客観評価:評価語による画質評価においては,言葉自体の持つ意味が個々の評価者によって異なる場合があり,正確な評価が行えないことがある。そこで,言葉では表現することが困難であろう部分も包含した客観的な画質評価を行うことを目的として,生体反応の一つであるα波に注目した。開発を行った高品位画像システムに画像を表示したときのα波の発生を測定し,画質(品位)との間に関係があることを明らかにした。 一方で,画像を従来の統計モデルのような画素の集合ではなく,画(曲面)の集合に基づく新しい画像モデルを提案し,本モデルの核となりうる基本曲面の抽出を行った。ここで抽出された基本曲面は,画像を構成するために必要な基本的な特徴量となる。基本曲面のみを用いて画像構成を行った結果,それらは,画像の大まかな部分を近似するに十分であることを明らかにした。
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