当該研究の「階段コスト」とは、ネットワークシステムにおいて、転送される情報ファイル(データ)の大きさに応じて、階段状に離散的に増加するコストのことである。転送コストがこのような階段コストであるシステムを考察対象とし、その上で、情報ファイルを、最小の総コストで転送する方法を、理論的に確立して、実際にプログラミングを行って実践するのが当該研究の目的である。ただし、転送方法は、情報の発信局からのダイレクトな場合のみならず、途中の中継局においても、情報を複製できる場合を含め(その際、複製コストも考慮する)総コストが最小となるような方法を取るものとする。本年度の主たる目的は、基礎理論の確立であった。その結果、得られた結果は、次のようである。 1.パス構造に限定して、各点の情報ファイルの需要部数を1と限定した場合、総コストが最小となるような転送方法を求める、全解探索的プログラムを開発した。 2.1と同様の条件の下、別の高速なアルゴリズムを開発し、プログラムにした。 3.2の高速アルゴリズムでの最適性の証明等、背景となる基礎理論を、学会で発表するのと同時に、研究室のホームページでも公開し、理論の普及を行った。 一見すれば、パス構造に限定した場合、最小総コストの転送方法の研究がほぼ終了したかのように見える。しかしながら、情報ファイルの需要部数の一般化の問題が残されている。また、パス構造よりも一般的な構造のネットワークを対象として、このような、情報ファイルの転送方法を求める上で、当該研究での考察がどのような活用・拡張できるか、などが興味深い問題である。いずれにせよ、基礎的な課題は、まだまだ残されていて、今後も継続して研究すべき余地があるかと思われる。
|