研究概要 |
本年度に行った研究業績を要約すると次のようになる. 1.3元線形独立信号系に対する最大相互情報量の数値計算 量子情報理論において,これまでは2元信号系と線形従属信号系のみ,最大相互情報量が明らかにされていたが,3元線形独立信号系に対し,最大相互情報量を数値的に算出した.扱った信号系は,3元PSK信号及び3元実対称信号である.Fuchsらの推論に基づき,用いる決定作用素のクラスを3個と限定し数値計算を行った結果,信号間の内積によって,相互情報量最大の条件が,3つの信号が等確率である場合とそうでない場合があることが明らかになった. 2.2元信号の2次拡大に対する最大相互情報量の数値計算 2元信号の2次拡大は,4元信号となるが,この信号系に対し,最大相互情報量の数値計算を行った.ここでも,用いる決定作用素のクラスは信号数と同じ4個と限定した.その結果,拡大前の信号間内積が1に近いところで,4つの信号のうち,1つは全く使用しないときに,最大相互情報量が達成される可能性が高いことが明らかとなった. 3.3元線形独立信号系に対する通信路容量の超加法性の検証 通信路容量の超加法性の検証のためには,符号化なし最大相互情報量の計算が不可欠であるが.本年度の研究で得られた,3元線形独立信号系に対する結果を用いて,その超加法性の検証を行った.その結果,3元PSK信号と3元実対称信号の超加法性の達成度特性は,信号間の内積が同じ値であっても,大きく異なることがわかった.また,信号系によって,高い超加法性の達成可能な符号が異なることが明らかになった.これは,これまでに得られていた2元信号にはなかった性質である.
|