研究概要 |
今年度は,波動の観測域の3次元的な領域特定と,その波動の到来方向の推定という2つの観点から研究を行なった.具体的な研究成果は,以下の通りである. 1)極域に見られる静電的な低周波ノイズ現象の強度分布に関する研究 イオン加熱・加速現象に関わる静電的な低周波ノイズ現象について,あけぼの衛星による長期観測データを元に,波動の強度分布の太陽および地磁気活動度との相関,ローカルタイム依存性などを統計的に調べ,このノイズ現象がカスプではあけぼのの飛翔高度全域および朝側オーロラオーバルの3000km以上の高度で特に卓越すること.また太陽活動の静穏期の方が強度が増大することなどを明らかにした. 2)波動の到来方向決定に関するアルゴリズムの開発 観測データからは同の伝搬報告を求める手法である波動分布関数法は,逆問題の一種で必ずしも一意に解が決定できず,従来提唱された手法にはさまざまな問題点があった.本研究課題では,到来波のエネルギー分布がガウス状に分布していると仮定し,最適なパラメータをフィッティングにより求めるモデルを提唱しその有効性について検証を行なった.同手法においては,ニューラルネットのホップフィールドマシーンなどで用いられるエネルギー関数の概念を導入した初期値探索法を開発することで,計算に要する時間を飛躍的に短縮すると共に,求められた解の信頼度を数値的に表現する客観的基準を設ける解析法を開発した.実際にあけぼの衛星で得られたいくつかの波動現象についてその有効性を試したところ,理論によって計算される波動の伝搬特性と矛盾しない結果が得られ,同手法の有効性が確認できた.
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