研究概要 |
本年度はヒステリシスニューラルネットのダイナミクス解析のため理論解析及びシミュレーションを主に実施した。さらにヒステリシスニューラルネットを組み合わせ最適化問題の解法に応用するためにまず、システムに対して定義されるエネルギー関数と組み合わせ最適化問題に対して定義されるコスト関数との比較検討及び理論的考察を行った。その結果、従来のシステムではエネルギー関数の単調減少を保証するようにしなければ解が得られなかったのに対して、提案システムではエネルギー関数の単調減少を保証しなくても解が得られることを明らかにした。また、制約条件充足型の組み合わせ最適化問題に対しては本提案システムでは最適解のみが安定出力として得られることを明らかにした。ただし、このようにパラメータを設定した場合、最適解のみが安定となるが一方で周期解もアトラクタとして共存してしまう。このような場合には各素子の時定数を制御することにより各アトラクタのドメインを制御することが可能であることを実験的に導いた。以上の結果を基にNクイーン問題を例題にとしてシミュレーションを行った。以上の成果は1999 IEEE International Symposium on Circuits and Systems(ISCAS99),1999 IEEE/INNS International Joint Conference on Neural Networks (IJCNN99),1999 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications (NOLTA99)等の国際会議で発表し IEICE Transaction on Fundamentals 誌上にて公表した。本手法の適用可能範囲を明らかにするため、現在巡回セールスマン問題、LSI配線における多層チャネル問題、四色問題等を例題とした研究も進めており、これらの成果に関しては2000 IEEE International Symposium on Circuits and Systems(ISCAS2000),International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications(NOLTA2000)で公表する予定である。また一部の結果に関しては現在電子情報通信学会論文誌へ投稿準備中である。以上の理論的考察、シミュレーション結果を基に来年度は電子回路による実装を目指し、既存のディジタルコンピュータによるアルゴリズムと本システムを用いた場合の計算時間の関係を考慮した研究を進めてゆく予定である。
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