研究概要 |
本研究は携帯電話や衛生通信等の情報通信において,雑音の影響を取り除く誤り訂正符号に対する復号法を対象としている.中でも最ゆう復号法は復号誤り確率を最小とするが,多くの計算量を要するという欠点をあわせ持つ.この最ゆう復号法の計算量低減を実現する著名な手法として,誤り訂正符号の符号化を利用する復号法が研究されている.これは通信路から受信した系列の信頼度の高い位置を情報系列とみなし,この情報系列を少しづつ変化させながら複数回符号化を行うことにより候補符号語を出力し,ゆう度が最大となる最ゆう符号語を推定する復号法である.これにより復号に必要となる平均計算量の大幅な低減が実現されている. 本研究は最ゆう復号法の計算量を従来手法よりさらに低減することを目的としている.上で述べた複数回の符号化を利用する従来の数多くの最ゆう復号法では,すべて複数回繰り返す符号化は毎回独立に行われる.従って復号法全体で必要な計算量は符号化の計算量に比例してしまう.また符号化を行い候補符号語を求めてから,その符号語のゆう度(事後確率に比例する)を独立に求めている.しかし複数回の符号化を行う情報系列同士は非常に関連があり,以前候補符号語として出力された符号語を利用することにより次に出力すべき候補符号語を非常に効率良く求めることができる.さらに複数符号語のゆう度を同時に計算することによりさらなる計算量低減が実現できる.これらの技術を導入することにより結果的に符号化する回数が低減され,かつ符号化1回に必要となる計算量も減少することにより,復号全体に必要となる計算量を大幅に低減した.これらの提案は,復号誤り確率の多少の劣化を許しても,更なる大幅な計算量の低減を実現する準最尤復号法へ応用することも可能であり,これらへの応用とその効果の検討は今後の課題である.また,計算量低減の理論的保証も重要な課題である.
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