研究概要 |
本申請者らは,従来のモノポールアンテナ型のVHF帯携帯無線端末用アンテナの特性が無線機筐体を手で持ったときに大きく変化し,放射効率が数dB以上低下することを見出した.これは,筐体の寸法が波長に比べてかなり小さく,グランドとして機能しないために,これを手で持ったときに人体にも電流が流れることに起因しているものと考えられる.しかしながら,このような問題点を指摘し,その対策について論じた論文は従来報告されていない.本研究では,無線筐体を手で持ったときであっても,特性が変化したり放射効率が低下することのないVHF帯携帯無線端末用アンテナの形状を明らかにしている. 本研究では,始めに2分の1波長モノポールアンテナまたは同じ共振条件(反共振)となるヘリカルアンテナにインダクタンスとスリーブを取り付けたアンテナについて,筐体を手で持ったときと持たないときのアンテナ特性の変化を実験により示し,提案するアンテナは人体による影響が少ないことを示した. 提案するアンテナは半波長型アンテナを用いているために,従来の4分の1波長型アンテナに比較して長くなるという欠点を有している.従って,要求される帯域幅を考慮しながら小形化を図る必要がある.そこで,測定結果から提案するアンテナのアンテナ長と帯域幅の関係を明らかにした. しかしながら,実験で用いたスリーブとインダクタンスは各アンテナに対して必ずしも最適なパラメータとなっていないため,さらに特性が向上する可能性が残されている.そこで,無限大の地板上に提案するアンテナが取り付けられている場合のアンテナ特性を数値シミュレーションによって求めることにより,インダクタンスの巻数やスリーブの長さ及び直径を変化させたときのアンテナ特性の変化を明らかにし,本アンテナを設計するための基本指針を示した.
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