本研究の目的は、図形認識システムに有用な、図形形状の階層的記述手法を確立することである。ここで図形形状の階層的記述とは、図形の局所的形状から大局的形状に至るまでを陽に表現したものである。階層的記述を作成するためには、円の半径や線の幅などに相当する図形を特徴付ける大きさを図形自身より求めなければならない。今年度は、輪郭線図形を対象として数理的な基礎研究を行ない、輪郭線図形の階層的記述を利用した認識システム構築について考察を行なった。今年度の研究により新たに得られた知見をまとめると、次のようになる。 1.輪郭線図形は様々な大きさの「形」の組合せにより構成されているとみなすことができる。それぞれの「形」とその大きさを捉えるためには、輪郭線図形の平滑化操作および平滑化操作による形状変化を捉えるための特徴量を適切に定めることが有効であることを見出した。 2.図形に加える平滑化の操作量を次第に増やしていくと、より小さな形から次第に消えていく。このことを利用して元図形を構成する「形」の大小を捉え、小さな形のみを消去することにより元図形の近似図形を作成する手法を提案した。作成される近似図形は元図形の大局的形状を記述したものである。 3.複数の輪郭線図形の近似図形を作成しその形状を比較することにより、元図形が共通して持つ大局的な部分形状を抽出する手法を提案した。抽出される大局的な部分形状は、元図形の記述に有用な記号とみなすことができ、汎用的な認識システムの構築に有用である。 本研究の目的一つである、汎用の図形認識システムのための、輪郭線図形の階層的記述手法を提案することができた。
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