画素のカテゴリ分解を適応的に実現するアルゴリズムの研究をおこなった。異なるスペクトルをもつ数種の対象物を想定し、それらが画素中に種々の面積比で混在する場合を考える。観測条件により対象物の分光反射率が変化しても面積比に誤差を生じないように、データ自身から要素物質のスペクトルを推定しつつ、面積比を求めるアルゴリズムを開発した。N種の物質のスペクトルが混合して観測される分光データを、N次元の特徴空間で表現すると、混合過程を線形と仮定したとき、種々の比率で混合したスペクトルをは、要素物質のスペクトルを頂点としたのN次元単体の内部に存在する。まず、データ全体を主成分分析で圧縮してN次元の特徴空間に表現し、対象領域における画像の各点で得られた分光データに対して、それらを内部に含むN次元単体のうち体積が最小のものを決定し、要素物質のスペクトルを推定した。計算機シミュレーションで混合スペクトルを発生させて実験を行い、アルゴリズムの原理的な妥当性を確認した。要素数3から5までの場合について実験をおこない、正しいスペクトルが推定できることを確認した。さらに、トレーニングデータの代表性が低下する状況として、衛星のセンサからのルッキング角が画像内の領域ごとに変化する場合を考えて反射率の変化をモデル化し、シミュレーション実験をおこなった。要素スペクトルを固定して分解をおこなう従来のアルゴリズムを用いた場合と、本アルゴリズムを用いた場合について分解の精度を比較した結果、従来法では最大約10%程度の誤差が生じる場合においても、本手法では1%以内の誤差で面積比が推定できた。今後は、現実のデータに対して本アルゴリズムを適用した場合の精度や問題点を明らかにしていきたい。
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