本奨励研究(A)は平成11-12年度が期間であり、現在初年度を終了した段階にある。本年度は当初の計画通り、ファントムの作製とビームフォーミング処理のアルゴリズムの改良を行った。まず、ファントムは、信号源の位置精度を向上させるため、当初の計画であった電極を水槽内に配置する構成を改良し、コイルを空気中に配置する構成とした。この結果、位置精度はサブmmのオーダとなり、磁気信号処理の標準データを作ることができた。この成果は雑音軽減の信号処理結果と併せて、学会発表を行った。(長縄他)。また、ビームフォーミング処理の改良は、処理アルゴリズムの高速化と、処理の安定化の点から行った。多点計測データを高次元のデータ時系列であると取り扱い、その特異値分布をベースとする幾何的構造から安定して処理できる空間を定め、その部分空間のみ探索するようにした。この結果、安定性は向上し、処理時間は大幅に短縮した。この成果も学会発表を行い、計測自動制御学会から研究奨励賞を受賞した。(眞溪他)。さらに、次年度の準備として、音像定位に伴う聴覚誘発磁界の計測も開始し、データの空間的広がりの考慮を始めた。これは、ビームフォーミングによって安定に推定できる電流分布を調べることが目的である。この基礎的な研究成果も学会発表を行った。(増田他)。この準備段階得た知見を元に、ICA(Independent Component Analysis)を用いたビームフォーミングも開始し、聴覚誘発磁界解析とともに、8月の国際会議Biomag2000で発表予定である。
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