研究概要 |
1.唾液採取器具 唾液中のぶどう糖濃度(唾液糖)の高精度分析を実現するために,数μl前後の唾液を1分程度で採取でき,かつ衛生的な使い捨て式の唾液採取器具を考案した。試作した唾液採取器具の検体導入部となる先端には,15×30mmの大きさの綿布(白十字(株))をパラフィンフィルムで巻きつけて形成し,柄の部分は内径1.02mm,外径1.78mmのエチレンビニルアセテートチューブ(「THEMOPLASTIC社)を採用した。内面を5%ツィーン85エタノール溶液で界面活性処理することにより,検体の採取を容易にした。この採取器具を舌下小丘上に1分程度挿入するだけで,唾液糖分析に必要量な9μlを採取できるようになった。 2.ぶどう糖試験紙 ぶどう糖濃度が0.1mg/dlから10mg/dlの低濃度領域にある唾液糖値を分析可能で,しかも携帯可能な大きさの測定器を実現するために,高感度ぶどう糖試験紙を開発した。この試験紙は,グルコースオキシダーゼ(GOD),ペルオキシダーゼ(POD)及びクロモゲン(オルトトリジン)が含有された酵素試験紙の一種であり,通常妨害還元物質の影響を低減するために含浸する疎水性高分子を取り除きぶどう糖に対する感度を増大し,また標準反応時間を90秒まで延長して増感した。その結果,必要と考えられるぶどう糖濃度0.1mg/dlを90秒以内に分析可能となり,ぶどう糖試験紙の試作を完了した。 3.非侵襲血糖測定器 ぶどう糖試験紙の発色濃度を測定し,ぶどう糖濃度に換算する光学式測定装置として,まず基本性能を評価するために1次試作機器を試作した。これは,赤色半導体レーザ(三洋電機(株),波長650nm),およびフォトダイオードで構成されており,本体の大きさは170×125×36mmである。検体である唾液を滴下したぶどう糖試験紙を挿入すると,糖濃度に比例した発色濃度を光学系により比反射率(吸光度)として検出できるようになった。 4.臨床評価 試作した携帯型非侵襲血糖健常者5名に1週間間隔で早朝空腹時に各3日間,経口糖負荷試験を実施した。その結果,糖負荷後,血糖値とともに唾液糖値も上昇し,血糖と唾液糖の個人相関は3日間の平均で0.81±0.91が得られ,全被検者の平均では0.86となった。本臨床評価により,個人相関は2週間に渡る経時変化を考慮しても0.8を超えることが判った。
|