研究概要 |
楽音合成技術として,現時点までに普及している方式としては,1)サンプリング方式,2物理モデリング方式の二つがあげられるが,近年,演奏行為における人間のジェスチャとその演奏によって生成される音響のパラメータから,直接的に演奏行為-発音のモデル化を目指すデータドリブンモデリング方式による楽音合成方式が注目を集めている.本研究は,データドリブン方式に基づく尺八シンセサイザを構築を目標とするものである. 本年度は,1)尺八演奏における技法やジェスチャを入力するためのハードウエア開発,2)音響のパラメータ解析のための手法の検討を実施した. 尺八演奏における技法やジェスチャを入力するためのハードウエア開発としては,運指計測のための尺八本体の加工(指穴付近を薄く削り電極を配置),加速度センサと角速度センサによる尺八本体の姿勢角の計測デバイスの実装を行った. 音響のパラメータ解析については,音声研究を目的に開発が進められているSTRAIGHT(高品位VOCODER)による尺八音の解析と再合成を行った.STRAIGHTがこの目的に十分に使用しうることを確認した一方で,ムラ息などのノイズ成分が混入する部分に対応するためには,別途,基本周波数抽出手段を用意する必要があることがわかった. 以上の結果については,International Computer Music Conferenceにて学会発表を行っている.平成12年度は,本年度の実績に基づき,基本周波数抽出処理の実装と,ジェスチャ情報と音響のパラメータのマッピングアルゴリズムの実装を進めていく予定である.
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