本年度は昨年度の結果をもとに、医用画像への適用を前提とした線構造の抽出と理解に関する検討した。特に、線画像を用いた診断支援において重要である曲線構造の理解と複雑な組織構造をもつ部位に対する輝度勾配ベクトル場モデルの最適化を中心に検討を行った。 線画像の直線分としての構造は、オブジェクト空間の方向軸と垂直な2次元断面(スライス)を利用した処理により容易に理解することができる。しかし、曲線にこの手法を用いた場合は異なる方向軸座標を持つ複数の直線分に分割される。曲線の理解には、オブジェクト空間を3次元的に取り扱う必要があるが、スライス内の画素間の接続性は「直線分」という意味で強いが、スライス間の接続性は比較的弱いという線集中ベクトル場モデルの性質を考慮すると、空間軸と方向軸を同等に取り扱う3次元処理ではオブジェクト空間の利点を損ねてしまう。そこで、直線分を最小単位として、そのスライス間接続性を評価することで、安定した曲線構造理解を実現した。 医用画像診断支援を実現する際に、以上の手法は線構造の理解には有効である。しかし、胃領域境界線を求める場合には、胃小区のように非常に弱いコントラストを持つ線構造を処理する必要はない。そこで、対象とするコントラストをもつ線構造を選択的に検出する方法を検討した。従来の集中度評価ではベクトル強度を完全に無視したが、集中度評価に利用するベクトルの選別にベクトル強度を利用することで、対象とするコントラスト範囲の制限を実現した。この際に、対象とするコントラスト範囲の中では、コントラストとは無関係に等しく検出できるという従来の特性は維持される。
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