本研究の遂行で得られた結果の概要を以下に要約する。 1.自然き裂同定のための逆問題手法の開発 実環境下における原子炉内に自然発生したき裂を模擬するために、日本AEM学会より自然き裂モデルが提唱されている。本年度は、提唱モデルのき裂形状を、磁気センサーより得られる電気信号より同定することを検討した。上記モデルに対して、報告者らが開発したラプラス変換を用いた境界要素法により、2次元での数値解析を行い、検討した。実際の提唱モデルは3次元モデルであるが、これまで報告者らが開発してきた特殊な数値解析手法を適用するために、今回は2次元での解析とした。本同定問題では、磁気センサーで検出される磁束密度値から、き裂形状を同定する必要がある。つまり、既知となる磁束密度値から、未知であるき裂形状を同定する必要がある。この場合、未知量に対する既知量の不足から、その同定が困難になるのが常である。これに対して、報告者は、通常行われているように、磁気センサーの励磁として、交番磁界を用いるのではなく、インパルス磁界を用いた。センサーのインプットとして、より複雑な励磁を行うことで、き裂形状同定に用いる情報量を増やすためである。さらに、対象としている類の問題は、不適切問題と呼ばれ、形状同定のためのマトリクス方程式を解くこと自体が困難である。これに対して報告者は、正則化手法を用いることで、その同定を可能とした。更に、正則化手法にファジイを導入することによって、実環境下でも自然き裂を評価することが可能となる、あいまいさを導入したき裂の同定手法を開発した。
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