研究概要 |
本研究では,100MHz〜1GHzの高周波で変調した近赤外光を散乱物質に照射し,検出された光の振幅と位相から対象の光学物質性値を測定するシステムを構築する。さらに,これを生体組織の酸素代謝計測に応用することを目的としている。試作した測定システムの光源は波長780nmの半導体レーザで,高速,高感度アバランシェフォトダイオードを検出器とした。光源と検出器にはネットワークアナライザが接続されており,光源の変調周波数を制御するとともに,検出光の振幅と位相を測定した。ネットワークアナライザで検出される位相は光ファイバおよび信号処理回路による位相遅れを含むため,入射光ファイバに隣接してファイバを配置することで,物質表面からの反射光を参照光として捉え,参照光と検出光の位相差から散乱物質内のみにおける光の位相変化を捉える光学系を構築した。試作したシステムを評価するため、散乱粒子と色素を混入した液体に光を照射し,検出光の振幅および位相が液体の散乱,吸収係数によってどのように変化するかを測定した。散乱係数を大きくすると,検出光の振幅はわずかに減少し,位相は増大した。また,吸収係数を大きくすると,振幅,位相とも減少した。これらの傾向は,従来までおこなってきた散乱物質内における光伝播のシミュレーションによって得られた結果と一致しており,試作したシステムの妥当性が検証できた。今後,実測した振幅と位相から散乱物質の光学物性値を求めるアルゴリズムを開発するとともに,生体組織の一部分で酸素代謝変化が生じたことを想定した非均質モデルを用いて,試作したシステムの生体酸素代謝計測への応用を検討していく。
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