平成11年度は主に抗体の固定相となるゲルの石英キャピラリへの形成条件の検討と、キャピラリを用いた蛍光異方性の測定系の設定を行った。 ゲルとしては、化学的、生物学的活性の少なさ、親水性、修飾試薬の豊富さからtetramethoxysilane(TMOS)モノマーから重合形成したシリカのハイドロゲルを用いている。ゲルに抗体を共有結合的に固定化するためには、化学的結合を形成するための反応基を導入する必要がある。このためシラン系表面修飾試薬のaminopropyltriethoxysilane(APTES)をTMOSに混合してゲルと重合させた。このときAPTESは塩基性の試薬であり、一方TMOSゲルは溶液のpHが高いと急速にゲル化する。このため通常の条件でゲル化を行うと均一なゲルが形成されず、わずかの圧力でゲルが抜け落ちてしまう。そこで溶液の温度、TMOSの濃度を調整することでゲル化速度を低下させ、均一なゲルを形成する条件を決定した。現在この条件で形成されたゲルを用いて、アミノ基への分子の固定化を試みている。 キャピラリ中のゲルの蛍光異方性測のためには、従来用いている蛍光光度計に比べて、より小さな領域に集中して測定が可能なように、蛍光顕微鏡を用いた測定系を新たに設定した。用いた蛍光試薬は350nm付近に励起ピークをもつため、紫外線用の光学系により水平偏光をキャピラリに収束している。キャピラリからの蛍光発光はビームスプリッタにより分割した後、縦偏光と横偏光に分けて光電子増倍管で測定し、コンピュータに取り込んでほぼ実時間で蛍光異方性を計算している。これにより光源の強度の変動の影響をなくし、また最低限の試料の退色で異方性の測定が可能となった。 来年度は、上記の測定系を用いてゲル相への抗体の固定化を行い、また実際に試料を導入してセンサとして動作確認と特性の改善を行う。
|