本研究では流体分析システムに用いる抗体を用いた生体高分子センサの、高感度化に必要な基礎技術の確立し、動作確認のための試作を行う。昨年度はより多くの抗体分子を固定化するための親水性ゲルの形成条件について検討した。本年度はゲルへの抗体の固定化と抗原抗体反応の検出を行った。 抗体をゲルに固定化し、またゲル中で抗原抗体の結合反応を検出するためにはタンパク分子がゲル中に拡散することが必要である。蛍光ラベルしたタンパク分子を用いた測定により、数ミクロン程度の距離までなら十分早い拡散が起きることが確認された。そこで、厚さ1ミクロンのゲルを石英基板表面にスポット状にマイクロパターニングすることで抗体固定化相を形成した。 このゲルに昨年度開発した共有結合的固定化技術を用いて抗体分子を固定化し、蛍光測定を行ったところ、バックグラウンドは変わらないのに対して蛍光強度は2倍に向上した。この値は理論値に比べて非常に小さいので、ゲルの調製方法の検討により、さらに大きな改善が期待できる。また蛍光異方性は通常の基板表面への固定化と同じ値で、さらに抗原の結合実験から抗原抗体反応の検出が可能であることが示された。以上の結果から、石英基板表面のゲルに対して抗体をスポット状に固定化し、高感度な光免疫測定を実現することができた。これにより、多成分生体試料に対する高速免疫測定技術の基礎が確立したものと考えられる。
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