研究概要 |
磁気軸受は,非接触支持が可能で摩擦を零と見なせることから超高速回転の技術的な壁を一気に打破するものとして近年期待が大きい。しかし,不安かつ非線形系で高次共振モードを多数持つことから,制御系設計のためのモデリングが難しいという問題がある。そこで,本研究では,制御のためのモデリングを念頭に置き,近年注目を浴びている,同定と制御器の繰り返し設計法の適用を試みる。 以上のもと,平成11年度では以下の研究を遂行した。 1.5軸制御型磁気軸受のシミュレーションモデルの導出 弾性ローターに対し,27分割のFEMモデルを構築し,高次モードを含む数学モデルを構築した。また,磁気回路の持つ非線形性をそのまま微分方程式で表現し,先程の弾性ローターのモデルと合わせて磁気軸受系の仮想モデルをMATLABのSimulink上に構築した。この仮装シミュレータにPID制御器を適用し,ステップ外乱及びインパルス外乱に対する出力応答を調べたところ,実モデルを十分良く近似したモデルであることをが確認できた。 2.計算機上に構築した仮装モデルに対する,同定と制御器設計の繰り返し設計法の適用 システム同定と制御器設計の繰り返し設計法を,構築した仮装シミュレータに対して適用した。その結果,おおむね良好な結果が得られたが,(1)磁気軸受は多入出力系であるが,多入出力系に対するシステム同定法が必ずしも良く整備されていないため,繰り返し設計が収束するためには,多くの試行錯誤をともなう。(2)繰り返しを続けるに従い,評価関数の値が再び上昇する現象が現れ事がある。(3)同定信号にはM系列信号を用いたが,そのパラメータ設定によって,結果が大きく変わる場合がある,という問題も残った。次年度は,これらの問題を解決するよう,改善方法を探ると共に,実験により本手法の有効性を検証する。 以上より,平成11年度の研究計画を予定通り進めることができた。
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