多くの制御系CAIソフトウェアは制御系の解析、設計、シミュレーションをサポートするが、リアルタイム制御機能を提供しないので、制御実験は別のソフトウェア環境で行われる。大学の実験演習や企業の研修では、高額である実験装置は数台しか準備されていないため、順番待ちや交代に時間がかかり、効率的に実験が行えない。 本研究では、モーバイルコンピュータによる実験装置の共有を実現することにより、制御系の解析、設計、シミュレーションからリアルタイム制御実験までをシームレスに学習できるCAIシステムを開発することを目的とする。モーバイルコンピュータと実験装置は低速なワイヤレスなネットワークで接続されるので、実際にシステムを開発し、データ転送速度の影響を調べ、コンピュータの配置について検討した。具体的には、 1 申請したパーソナルコンピュータと2台のノート型コンピュータに無線LANアダプタを取り付け、ワイヤレスな通信を実現するモーバイル環境を構築した。 2 リアルタイム制御時に通信するデータ量を決めるため、コンピュータの配置について検討し、低速な通信速度の影響を実験により調べた。 そして、申請者が開発した科学技術計算ソフトウェア(MaTX)を申請した開発ソフトウェアを用い、申請したパーソナルコンピュータ上で稼動するいくつかのOSに移植し、ネットワーク通信およびリアルタイム制御について検討した。その結果、構築したモーバイル環境でリアルタイム制御実験が可能であることが分かった。また、ソフトウェアを稼動させるOSとしてLinuxが適していることが分かった。利用者が多いと思われる市販のOSであるWindows95/98についても検討していくこととした。
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