研究概要 |
[制御方式の検討]180pprのロータリエンコーダを搭載したマイクロ超音波モータサンプル(SII US15SE1)を制御対象として,各種制御方式の検討を行い,次の知見を得た: 1.従来の自励発振回路を使用する方法:(a)異なる抵抗を接続した複数のバッファを制御する方法:低抗値の調整が困難であり,バッファの制御信号に対するロータ回転速度の線形性が悪いが,テーブル参照により対応できる可能性がある.(b)PWM方式:自励発振回路を高速にON/OFFするタイミングを調整してロータの回転速度を制御する.滑らかに回転させるためには500kHz以上の基本周波数が必要であり,安価なCMOS ICを用いて実現するのは困難である. 2.正弦波加振器を使用する方法:DDS回路を用いて,任意の周波数・振幅の正弦波交流電圧発生し,モータを加振する回路を製作した.高価ではあるが,速度制御範囲が広く,高精度な制御が可能である. [速度測定系の製作]エンコーダパルスの間隔を高精度に計測するカウンタ(1.6MHz,16ビット)を製作した.180pprのエンコーダと組み合わせると,瞬間回転速度の測定誤差は10rps時±0.01rps,20rps時±0.05rpsとなった. [周波数応答実験]正弦波加振器とカウンタを用いて周波数応答実験を行い,本モータの基本特性(加振周波数と平均速度の関係)を得た.他の超音波モータと同様の非線形特性を有することを確認した. [定速度制御実験]サンプリング時間1msecでPI制御実験を行った.ロータの平均回転速度を目標速度に一致させることはできたが,設定速度によっては,速度変動が非常に大きくなることがわかった.回転速度波形は,ほぼ回転に同期しているため,引続き修正繰返し制御の検討を行う. [重み関数に基づく修正繰返し制御系設計手法の開発]修正繰返し補償器を内部モデルとして扱う従来の設計の問題点(むだ時間をボール集合と捉えることの保守性を適切に低減することができない)を解決するために,修正繰返し補償器を感度関数の重みに含める設計手法を開発した.この手法では,むだ時間を有限次元近似してその近似誤差をゲインスケジューリングする等して,設計の保守性を適切に低減できることを数値例で確認した.
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