研究概要 |
モデル予測制御手法とは,プラント出力の長期予測をもとに制御系を設計する手法であり,外乱やモデル化誤差に対してロバスト性が高く,入出力の制約条件が考慮でき,さらに,商業用ソフトウェアが充実しているなどの特徴を持つため,主に化学プロセス制御の分野で広く用いられている.しかし,モデル予測制御手法は化学工学分野もしくは応用現場の中で発展してきたため,システム制御理論分野の先端的な制御手法が十分に活用されていなかった.この問題に対し,当研究者らはシステム制御理論の分野で活発に研究されている2自由度制御系設計手法をモデル予測制御手法に導入することに取り組み,モデル予測制御手法の一種である一般化予測制御(Generalized Predictive Control;GPC)手法を拡張し,その2自由度構成法を与え,新しく提案された手法が,従来のGPC法に比ベ,過渡応答やロバスト安定性に優れていることを確認した. 本研究では,そのような2自由度構成されたモデル予測制御手法の1)多変数化,2)適応化,3)理論と実験の両方面からの有効性の検討,を行うことを目的とする. 今年度は,この研究目的に対し, 1.2自由度GPCの有効性を温度制御系に適用した例の研究発表.(IFAC World Congress,July 1999) 2.状態空間法のGPCの多変数系に拡張する研究発表.(システム制御情報学会論文誌,2000) 3.1入出力系の2自由度GPCを適応系に拡張し,温度制御系に適用.(IFAC AdChem 2000,June 2000) をおこなった.その結果, 1.2自由度GPCを多変数系に拡張することに対する方法は実現可能である. 2.1入出力系に対する2自由度GPCに適応機構を導入することによって,制御対象のプロセスに大きな不確かさが含まれる場合も,良好な応答が得られることを実験的に確認した. などが,わかった. 来年度は,今年度の研究結果を踏まえて, 1,多変数系の2自由度GPCに適応機構を導入する手法の確立. 2.スーパバイザ(監督機構)を導入し,動作条件の変化に対して適応的に制御則を切り替える機能も加える手法の確立. を行う予定である.
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