研究概要 |
遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm,GA)の拡張手法である熱力学的遺伝アルゴリズム(Thermodynamical Genetic Algorithm,TDGA)を並列化した島モデル型TDGA(Island TDGA,ITDGA)を提案し,その解析を行った.非同期なネットワーク通信による移民として一時的に移民個体をバッファに保持する手法を用いたITDGAと従来のTDGAを単独のコンピュータ上で比較実験し,ITDGAが高い探索能力を有していることを示した.また,ITDGAをJava言語で実装し,実際にネットワーク下で動作実験をした.例題として実用規模のナップサック問題を用い,ITDGAと従来手法とを比較することにより,その実用性を確認した.ITDGAの基本的な特性,実装についての十分な検討が行えたことを踏まえて,以下に示す課題について研究を開始した. ・ITDGAの拡張として,より並列性の高いてセルラー遺伝アルゴリズムを提案し,並列コンピュータに対しても提案手法が適用可能であることを示した.また,セルラー遺伝アルゴリズムによる多目的最適化の検討および棲みわけ現象の解析を行った. ・ITDGAの持つ高い探索性能と並列性を活かして新しい進化適応システムの構築について検討した.このシステムでは,並列に作動するGAにより外環境を同定しながら同時に最適化が可能であり,今後の発展が大いに期待できると考えている. ・並列性の高い環境での共進化の研究として,システムと内部の要素が創発的に発展するモデルをゲーム環境におけるルールとプレーヤを例にとり構成した.ネットワーク上で複数のプレーヤが参加できるインターラクティブなITDGAの構成の可能性を示した. ・ITDGAの持つ並列性に着目し,それぞれの島に異なるパラメータを割り当てることによって自律的なパラメータ調整が可能なGAシステムを考案した.その際に必要となる島ごとの探索性能の比較のために「探索貢献度」と呼ばれる新しい指標を提案し,同指標による自律的なパラメータ調整が有効であることをN-k問題を例にとり示した.今回は,突然変異率の自律的調整を検討したが,今後はより多くのパラメータを同時に調整可能なようにシステムを拡張する予定である.
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