研究概要 |
平成11年度は,塩害による構造物の劣化過程を予測する統合プログラムの開発とプログラム中に用いる個別の現象モデルの開発を平行して進めた. 統合プログラムは,構造物の劣化過程のみならず,供用期間中に施した補修・補強の影響を考慮できるフレームとすることを念頭に,開発に取り組んだ.プログラムは,(1)かぶりコンクリート中の,水分,塩分,酸素の移動,(2)コンクリート中の鉄筋の腐食過程,(3)腐食ひび割れの発生・進展,(4)鉄筋が腐食した鉄筋コンクリート構造の力学性状,のモジュールにより構成される.補修・補強工法として,かぶりコンクリートの脱塩処理,連続繊維シートの接着を取り上げた.連続繊維シートの効果は,外界からの腐食促進物質の遮蔽と,部材中における引張力の負担の双方が期待される.それらを現実に即して考慮していることが特徴である. 上記の各モジュールに用いる個別の現象モデルについて,実験とメカニズムの考察に基づき,開発を進めている.以下の課題に取り組んでいる. (1)腐食物質の移動では,曲げひび割れの存在に着目し,ひび割れ幅,健全なコンクリート部分の双方の影響を総合的に考慮した,かぶりコンクリート中の物質移動の評価 (2)腐食過程の予測では,電気化学的知見に立脚し,塩分濃度,酸素供給量,pHを変数とした腐食速度モデルの開発 (3)腐食ひび割れに関しては,複数の鉄筋の配置,鉄筋に沿った腐食状態の不均一性を考慮できるひび割れ幅予測モデルの開発 平成12年度には,各モジュールに最新モデルを組み込み,さらにデータの入出力の視覚化を計画している.完成したプログラムは他の研究者に提供し,批判を仰ぐ予定である.
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